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SUDOKUの魅力に迫る
「数独」というパズルをご存知だろうか。「数独」とは、九個の三×三のブロックに区切られた九×九の正方形の枠内に一から九までの数字を入れて、さらにタテの列と横の行も一から九までの数字が入るようにするという、数字パズルの一つである。
今、その数独が国内外で空前のブームとなっている。昨年に英国でブームが起こって以降、数独は「SUDOKU」の名で世界八十五ヶ国の人々に愛されるようになった。また、国内では数独がゲームソフトとなって、「脳トレ」ブームに乗って人気に火がついた。今回はその数独の人気の秘密と魅力について、ニコリ代表取締役社長である鍜治真起氏に伺った。
数独は本来、日本オリジナルのパズルというわけではない。一九八四年に、鍜治社長がアメリカのパズル誌に掲載されていた「ナンバープレース」に惚れた。それを洗練させ、「数字は独身に限る」と改名して、「月刊ニコリスト」に発表した。後に「数独」と略して呼ばれるようになり、それが定着した。
鍜治社長は、数独が多くの人に親しまれる理由として、「ルールがスマートで、計算をする必要がない」ことを挙げる。「数独は、数字を当てはめていくだけの単純なパズルだから、どんな年齢の人でも、どの国の人でも楽しめる。細かい計算も必要ないから、楽。しかも、書き込み型のパズルだから、鉛筆さえ持っていれば、暇なときにいつでも出来る。お茶漬けを食べるような、気軽な感じで楽しんでいただけたら」。
また、ニコリ編集部では、問題製作の際、常に「サービス精神」を忘れないよう心がけているという。「優しすぎず、難しすぎず。数独はあくまで多くの人に楽しんでもらうための『商品』。読者が高難度の『芸術作品』のようなパズルに挑戦することを期待していない。気軽に、楽しく解けるものを作るよう意識している」。
問題作成の際は、読者が多様なタイプの数独を楽しめるよう、ニコリ編集部では手作りの問題にこだわっているという。「パズル作家が五十人いれば、五十個の違ったタイプの問題が出来る。その中でも、解く人によっては、合う問題と合わない問題がある。その違いがあるからこそ、問題を選ぶ楽しさがある。コンピューターが作成した問題では、作家の個性を感じる楽しみはない」。
簡単で、楽しい。そのコンセプトは数独が世に出てから二十年以上変わっていない。熱烈な読者の支持もあり、読者の口コミを通して着実にファンは増えていった。
数独に惚れたのは、日本人だけではない。そもそも英国で数独をヒットさせたのは、ニコリの愛読者だったニュージーランド人。『The Times』に売り込んで数独の連載を始めた。「『数独』は日本だけでしか商標登録されていないから、海外で模造品が横行している。でも、それで多くのひとが数独を楽しんでくれるのなら、かまわない。独占販売をして、会社を大きくするつもりはない」。
面白いと思ったものをみんなに紹介したい。そんな単純な思いから生まれた数独は、いまや多くの人々に愛されるようになった。いつまでも遊び心を忘れず、自然体な鍜治社長。その人柄が数独の問題にもにじみ出ているように思えた。人気の秘密は、そこにあるのかもしれない。
(北村慶一・植田啓生)
SUDOKUの魅力に迫る(慶應塾生新聞)
(2006年11月)